能登の災害（現地では地震の大きさも水害の恐怖も同じくらいの痛手だと聞いた。）を直視する日になった。
昨日の帰り道は能登道路の崖側を通り、その被害の大きさに唖然とするしかなかった。
補修してない下り路線は至る所で落ちていて、パックリ道路がなくなっているところが目立つ。アスファルトは波打ち、割れて剥がれ、ほとんどが沈下している。橋だけが堅固で橋に差し掛かる場所はひどい段差になっていて減速を余儀なくされる。
修復された山川を走っていても恐怖を覚える箇所が何箇所もある。神経が休まる暇がない。
国道や一般道を走って思ったのだが、能登道路が最悪のコンディションだ。
新しくぶち抜く道路は危ういなあ。以前東海北陸道の崩落映像を見たが、対岸の国道は普通に走れた。
昔からの道は安定した場所を走っているということだ。
これが伝統の力だと思う。
道標だ。
速いからと言って迂闊にショートカットしてはいかんのだねえ。

今日はカレーを食べに能登自動車道路ではなく海沿いの国道を走った。
美しい海を眺めながらのドライブは快適。
時々見る潰れた家や地滑りした山肌は胸が痛いが、普通に走ることが出来る道にホッとする。
北に向かうにつれその頻度は増し珠洲市に入ると至る所に崖崩れ後。
岬のカレー屋「いかなてて」に到着して美味しいスパイスカレーをいただく。
お勘定の時に話をすると、すずを支援してくれてありがとうと言ってくれた。お客様もたくさんいて嬉しいことだ。
再会を約束して狼煙を後に。

輪島を目指して走り始めると耕されているが水が張られてない田んぼがたくさん見受けられる。去年の災害で水路が変わり、水が確保できないのが原因だということだ。

海岸に出て驚いた。
ほとんどの崖が崩れむき出しになっている。
崩れる時の状況を想像しただけで震えがくる。

次に「愛知人」ベースで聞いた珠洲市の大谷町長橋海岸にある「みんなのマーケット」を訪ねた。
この地域の店がなくなってしまったのを聞き、愛知人のメンバー「エイミー」が一念発起で立ち上げたそうだ。
品揃えは多くはないが、弁当は充実していた。「すず食堂」という団体が作っているその弁当は「みんなのマーケット」でも食べる事ができる。そのおかげで、復旧工事作業員、地元の皆さんがよく集まる。
エイミーさんが歌って欲しいと言ってくれたので、一曲歌うと、客がやってきた。そしてお客さんと話しているうちに二人三人と増え、賑やかになってきた。
歌のお礼にといただいたサザエやワカメや山菜がめちゃくちゃ美味しく感動した。水のなくなった長橋漁港を眺めながらしばし楽しく酒盛り。
皆さんがいうにはこの先輪島方面はとんでもない被害だと。
ちゃんと道が走れるのか不安になりながらも皆さんのあったかい見送りに再会を約束して輪島に向かう。

その道は、もうこの世のものとは思えない状態。全ての崖が崩れていると言っても過言じゃない。
多分砂岩層なんだろう、白い新鮮な岩肌の崖と落ちてきた土砂が道路脇にいっぱいある。落ちてくる様子を見たら確実に失禁すると思う。怖かったろうなあ。
水害の後もひどいよと言われてたのでその意識で道路脇を見ると山崩れの土砂が細かいところには大量の木と潰れた家屋。
つい声が漏れてしまう。
そのまま進むとほぼ海岸全部が崩れているところに出る。
もう道路を通すのは不可能と思われるその場所には、崖、砂浜、防潮堤の外をものともせず走る道路があった。
巨大砂岩が眼前にゴロゴロする中を縫って走る道路は災害の悲惨さを超えて非現実、バーチャルリアリティと言ってもいいような光景。
悲しみなど消えてしまう光景だ。
その昔、NHK朝ドラで主人公たちが東京大空襲を目撃するシーンがあったが、山手だろうその場所から見た空襲の火事は「綺麗」だったと。
ひどい発言だとは思うが、迫り来る巨岩を目にしながら走り抜けるのはディズニーのアトラクションのような気分になった。
不謹慎であるが、、、

時間が合えば会いましょうね。と話をしていた輪島の方と会えたのは18時過ぎ。薄暗くなってきた輪島の町は倒壊した家も残るひどい状態だった。
正直、その光景に早くも麻痺し始めてるが珠洲市の光景に比べ随分と復旧が遅れているように思えた。
災害の傷跡を感じるのが目的なら輪島に行くべきだろう。

輪島であってくださったのはお二人。
挨拶もそこそこ話をしてると、輪島の復興のためのヒントを真剣に探している様子。何をしたら輪島に人を集められるか、私や仲間を輪島に歌いに連れてきてくれるのか？たくさんの質問をいただいた。
なんのアイデアも出せない自分に歯痒い思いをしたが、次に進もうと思っている輪島の若者に希望を持った。

軽く様子を見て回るつもりが、どっしりと宿題をもらってしまったようだ。
支援はこれから難しくなる。付かず離れずの体制をどう自分で作るか。
作れなかったら失敗する。
作れたらみんな幸せになる。